「組織で働くための精神分析―そこで生き延び貢献する術として―」
企画者である私(白波瀬)を含め、多くの臨床家が何らかの組織(医療、教育、福祉、司法など)に所属し、その中で臨床家としての業務を行うと共に、組織の一員として組織との間でさまざまな困難を体験しておられると考えます。 ビオンの「基底的想定集団」など精神分析の知恵は、私たちが組織で生き延び、組織に貢献するために、多くの恩恵をもたらしてくれると思われます。多くの方々が、たくさんの試みや工夫をしておられるのではと想像します。しかし、それらの取り組みを発表する場は少なく、それらを共有したり議論したりすることがなかなかできません。そのため、その方法論はまだ確立していません。一人一人の実践を持ち寄り、議論を通して作り上げていく必要があります。今回「組織で働くための精神分析−そこで生き延び貢献する術として−」をテーマにしてセミナーを開催することにしました。 私には精神科病棟の運営、総合病院でのコンサルテーション・リエゾン、学校精神保健での教員やスクールカウンセラーとの協働、産業精神保健で臨床心理士とチームを作り企業に介入するなどの経験があり、現在は自分の働く総合病院を「働きやすい職場にする」ことに取り組んでいます。それらは私にとっていつも「はじめての」取り組みでした。その場をどう理解し、自らが何をすべきかなどすべてが手探りだったのです。その時、私の拠り処になってくれたのが精神分析です。その経験から、組織で生き延び組織に貢献するためのツールとして精神分析はとても有効だと考えています。セミナーでは、その有効性をお伝えたいと思います。と同時に、参加者の皆さんにも皆さんの実践をお話しいただき、「組織で働く」というテーマにおける精神分析の有用性について理解を深め、その方法論を確立する活動を活性化したいと考えています。 なお、セミナーでは、それぞれの実践を精神分析概念で解説することよりも、その実践の中で生起している「精神分析的な体験」を参加者の皆さんに感じ取っていただくことを目指します。それは、体験的に学ぶと表現することもできますし、セミナーの場を「精神分析的」にすると表現することもできると思います。セミナーで経験した「精神分析的な体験」を皆さんがそれぞれの組織に持ち帰り、組織でどうしたら精神分析的な体験を生起させられるかを考えていただきたいのです。その取り組みがまさに組織で働くための精神分析を実践することになると考えるからです。ただ、この「精神分析的な体験とは何か」を説明するのはとても困難です。その意味でも、セミナーの中で皆さんに体験的に学んでいただきたいと考えます。 という次第ですので、「組織で働くための精神分析」と銘打っていますが、参加に当たっては必ずしも精神分析の知識は必要としません。「組織で働くための精神分析」について学びたいと思われる方、自らの実践を発表して議論したいと思われる方、「組織で働くための精神分析」の発展に関わりたいと思われる方、あるいは何だか面白そうと思われた方、いずれも大歓迎です。ぜひご参加いただくと共に、ご協力ください。ご参加をお待ちしております。
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