当会について

 近時、社会の大きな変化・変動にともない、不登校、引きこもり、過食や拒食、心身症、少年非行、児童虐待、育児不安など、「こころの健康」にかかわる問題がさまざまな形であらわれています。そうした時代において、「こころの専門家」としての臨床心理士への期待と要請がますます高まっています。

 そうした社会的要請を背景として、本会は、平成5年5月、こころの健康にかかわる専門家である臨床心理士の職能団体として設立されました。兵庫県内に居住または勤務する臨床心理士によって構成され、現在の会員数は、約1570名(2020年3月現在)です。

 本会は、会員のための研修会の開催、講演会などの一般向け啓発活動、臨床心理士の地位向上に関する事業、会員の相互扶助、日本臨床心理士会への協力など、さまざまな事業を行っています。

会長メッセージ

 2020.5.10

「われわれが、これから先、できること」

             

兵庫県臨床心理士会 会長 羽下大信

 現在の日本や世界規模でのCOVID-19の爆発的な広がりと、その事態への各国の対応の違いを見るにつけ、そこから学べることは何か、考えてみました。それは、こうでしょうか。起こりうることを適切に予見し、それに必要な一定程度の備えをしておくこと、となるのでは。これは政治のテーマであると同時に、私たち個人、また臨床心理士としての意識の在り方にかかわるテーマでもあります。

 一方、日常生活者としての私たちの意識や想像力は、ある限られた範囲で機能しているのも、また事実です。「今日は明日に続いている」、「自分はまだ死なない」、と想定することで、人は自分自身に関して、また、自分と世界との結びつきに関して、連続性や安定性を手に入れます。が、それらが今回のように一気に破られるとき、私たちが馴染んだ、目に優しい世界とは別の、一種異様な、ときに不快感さえ伴うものを見せられることになります。

 この予見できなかった事態を前にして、今一度、私たちが自分を取り戻すために必要なことは二つあるようです。一つは、この「私」が今いるのは、変転しつつ創造が繰り返される森羅万象の大きな流れの中なのだ、という意識に立ち戻ること。二つは、眼前の異和的な世界にも好奇心を向け、そこに参入し、人との新たな関係を創出しようとする職業的パッションを、自らのうちに蘇らせること。

 私たちが、こうした世界観や自己意識に立ち戻るためには、自らが人にかかわるこの仕事をしようと思った瞬間、それと同期して始動し始めた、そうしようとする自分へのフレッシュな期待、これを思い出すと良いのではないでしょうか。

 これから先、われわれの目の前に、日々新たに展開されて行くだろう世界。そこでは、たぶん、対人援助の形も、これまでとは様相を異にしたものになっていくでしょう。個人心理療法、医療や福祉分野、教育の場、産業場面。その新たな形や様相は、まだ誰も見ておらず、そこには誰も手を染めていません。

「パッション」には、もう一つ別の、「受難」という意味もあります。新たな試みは失敗と仲良しです。この時、それを挫折感や嘆きで迎えるなら、いわば受難となるでしょう。けれど、失敗を出発点とし、修正を加え、工夫し、あきらめることがなければ、転機の訪れとともに、予想しなかった形が見えてくるでしょう。手慣れた仕事の実行は自信(と収入)をもたらしますが、新たな試みは、創り出すことの面白さと魅力を、人に覚醒させます。

 これまでの蓄積への自負を胸に、臨床心理士としての活動はこれからです。そうです、まず、できることから、手掛かりのある所から、そのときの仲間とともに、一歩前へ、です。

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